今日は、食事を離れて高齢者の幸福感についてのお話。
「年寄りは集まって住め? そんなの余計なお世話…。」
もしそんな理由でこの本を読まないのなら、もったいないです。
手にとってもらうためにちょっと過激なタイトルをつけたのだと思いますが(著者もそう書かれています)、この本は住まい方だけの本ではありません。
「老いていくことに対して、なんらかの不安や心配を感じている人」に、確かな希望を贈ることができる本。
教えてもらえてよかった~という事実が、あちこちに散りばめられています。
メディアの取り上げ方にしろ世の中の風潮にしろ、超高齢社会や老いのことは、ネガティブ一辺倒に語られがち。先のことを考えるときに多かれ少なかれ不安を抱くのは普通かもしれません。
印象的だったフレーズで「正しく怖がる」という言葉がありましたが、イメージ先行で不安ばかり膨らませるのではなく、実際のデータを読み解くことの大切さを教えてくれます。
******
●幸福感のU字カーブ
面白いと思ったのは、人間が感じる幸福感は、47.2 歳を底にして、そこから上がっていくU字カーブを描くのだそうです。
(私も、近いうちにどん底に突入…><)
おどろきませんか?
私はとっても意外でした。
体が元気に動き社会的に活躍している50~60歳よりも、第一線を退いて体の自由がきかなくなりがちな80歳の方が、幸せを感じやすいなんて!
幸せって…主観なんですよね。
もちろん全員が幸せを感じられるわけではなくて。
外来でも「もう死んだ方がいいのに、まだお迎えが来ない…」と愚痴・不満・不安のオンパレードな方はいます。
(死んだ方がいいと言いながら、風邪ですぐに受診するのは…ww)
幸福を感じる人と感じない人の違いは、どこから生まれるの?
著者は、こんな風に書いています。
「老いによって得られる価値を見出せるかどうか。」
体の健康だけにフォーカスすれば、ほぼすべての人で、年を重ねる=喪失の連続です。激しいか緩やかかの個人差はあっても、50歳台の自分に80歳台の自分が挑むのは無謀。「年はとりたくない!」と叫んで加齢を忌み嫌うほど、失うものに焦点があたって幸福感が低くなる…という落とし穴が待っているんです。
一方で、物事の捉え方や考え方、人に感謝する態度などの面では、老いてなお獲得していく能力というのもある。 精神的成熟、と表現されいます。そういう「加齢とともに獲得したもの」に焦点をあてられるかどうかで、幸福感が左右されるというのは、なんだか頷ける部分がありました。
外来で、やたらと困っていることや辛いことを聞き出そうとする医者(私です)に、
「なーんにも困っていません。お陰さまで、家族が助けてくれますし。」
ほっこりと笑う高齢女性。
あれは起きたことを忘れてしまったり、問題認識ができていないのではなく、強がりでもなく、老年的超越からくる本音だったんだ…と目から鱗。
イェール大学のベッカ・レヴィ氏の23年の追跡研究でも、加齢に対してポジティブな発言をするグループの方が7.5年長生きであったという結果も出ています。年を重ねることをありのままに受け止めて、幸せに生きていきたいですね!