リスクを負えるのが家族

とある神経難病の高齢女性。

数か月前からフォローしていますが、利用している介護施設から「食事量が3割くらいに減ってきた」と相談がありました。血液検査では、確かに脱水所見あり。

熱心な息子さんは、私のつくった「攻めの胃ろう」という動画も見てくださり、胃ろう造設を希望。

胃ろう造設を前提に近日中に病院に紹介予定でしたが、施設ではその入院までの期間も対応がむずかしい…とのことで、急遽息子さんが家に連れてかえることになりました。

ただ息子さん、コロナの感染管理の都合で、ご本人に2か月以上会えていませんでした。

久しぶりに会ったら、予想以上に表情もしっかりしていて。

当院につくと息子さんが私に、

「いま、これを食べたんです!」

と見せてくれた写真には、手のひら大の缶詰ミカンとクリームパン1個。

おーーー。これは……

環境の力で、いけるかもしれない。

 

この息子さん、以前ご本人にお寿司を食べさせたことを報告して以来、すっかり施設に警戒?され、何かあると「施設では息子さんのようにはできませんから。」と繰り返されるとぼやいていました。

「誤嚥のリスクがあるから…と施設でリスクを負えなくなるのは仕方ないと思う。

でも家族だったら、リスクを負えるから。」

実はリスクから目をそらさず、それでもまっこうから口から食べることに向き合っている施設もあります。私自身、その姿勢から大きな学びを得ました。

胃ろうをつくってコンスタントに栄養補給をすることを否定はしませんが、たとえ胃ろうにしても本人や家族が望むなら、口から食べることを全面的にあきらめてほしくない。

この辺りは価値観ですが、私自身は、死ぬまで口から食べたい。

『死んでも食べたいと言われたら』

 

せめて私にできることを…と通常の補液に加えて、グルタチオン点滴でパワーチャージ。

(グルタチオン点滴は、神経難病で脳内に不足する成分を補う自費の点滴。この方はこの点滴をすることで、当初出なくなっていた言葉が出るようになりました。)

いい報告を待っています^^