先日読んだ『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』(津川友介)
うーーーーーむ…。
エビデンスをつなぎあわせた、パッチワークのような本です。
取り上げられているエビデンスの一つ一つは、おそらく‘誤り’はないのだろうと思います。
「現時点である程度確実だと思われているエビデンス」をかいつまんで知りたい、という方には意味があるのでしょう。「世の中にある最良の科学的根拠を文章にまとめて説明し、それを読んでもらうのが一番よい方法だと考えた。」と書かれていますし。
でも、‘正しい’と思われるエビデンスを一つ一つつないでいくと…あれ?なんだか残念な。
エビデンスというのは、直訳すると‘証拠’という意味。
医学的に「エビデンスがある」と言う場合、ある医学的な項目について、例えばそれをしている人としていない人の2つのグループにわけて追跡し、病気の発症確率がかわるか、などの結果を検証する研究がされていることを示します。ここで有意差が認められる=信頼に値する医学情報とみなされます。
ただエビデンスというのは、食生活のすべての項目で検証されているわけではありません。むしろ、エビデンスが示されているのは、ほんの一握り。エビデンスを示すのにはある程度大規模な人数で一定期間介入する必要があるため、莫大な人手やお金がかかります。
エビデンスがない情報だから信頼できない(価値がない)という考え方は危険だと思っています。
たとえばこの本では、豚肉や牛肉などの赤肉を食べることで、大腸がんの確率が上がるというエビデンス1点を根拠に豚肉や牛肉を「体に悪いもの」「食べない方がいいもの」と扱っています。
でも人間の体のすべての細胞・臓器がタンパク質でできていて、新鮮なタンパクが入ってこなければ質のよい細胞や臓器にならないという上流の原則を考えた場合、「質がよいタンパク質をしっかり摂る」ということは、優先するべき課題です。
タンパクをしっかり摂ることが、丈夫な粘膜や臓器ができることで肺炎などのあらゆる感染症の予防につながり、アレルギーや自己免疫疾患の予防につながり、筋力をアップして体力を維持できるという下流のさまざまな状態につながるのですから。下流の一つ一つについて、まだエビデンスはないかもしれませんが。
遅延型の食物アレルギーを避けるためにも、1種類だけの(鶏肉なら鶏肉だけ)タンパク質だけではなく色々な種類のタンパクをローテーションでまんべんなく食べる方が望ましい。そもそも体重1kgあたり1gのタンパクをとろうと思ったら、肉も魚も大豆も卵も、いろいろ取り混ぜてとらないと、量を稼げません。豚肉がダメ、牛肉がダメとか、そんなことを言っている場合じゃありません。
エビデンスで示されたAとBとCという要素の継ぎはぎだけでは、なかなか健康にはなれない。それぞれの点をどうつなぐのか?より上流の部分の哲学が大切なんだな…と再確認したのでした。
そんなわけで、私は今日も豚肉も牛肉もしっかり食べまーす!