先日外来にいらした80歳後半の認知症の男性患者さん。
「水分はどのくらい摂っていますか?」
という私の質問に対し、
「水分ならちゃんと摂ってます。」
と息子さん。
息子さんは東京在住。
患者さんは妻と2人暮らしのため、息子さんはあまり細かいことは
把握していないようです。
「1日でいいので、1日の水分量がどのくらいか測ってもらえませんか?」
しつこい私に、息子さんは
「妻が気をつけて、お茶を飲ませているから、水分は大丈夫だと思います!」
でも根掘り葉掘りお聞きする限りでは、どうも1Lくらいの飲水量のような。
水分は、食事以外で平均1.5Lは摂った方がいいと言われています。
高齢者は筋肉量が少ないので、
若い人のように筋肉に水分を蓄えられず、
脱水の影響を受けやすい。
体重50kgの方で、わずか250~500mlの水分が足りないだけで、ボーっとする、昼間からウトウトするなどの症状が出るのです。
この方は、夕方になると
「家に帰らなくてはいけない」と言って出ていこうとする症状があるのですが、
日中の脱水が、夕方に意識障害として出ている可能性があるのです。
ここで抑制薬を処方すると、ますますウトウトしてしまうので、リスクがない方法から試したい。
…というお話をして、
なんとか少しずつでも水分を増やせないか、工夫して頂くことに。
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日大歯学部の植田耕一郎先生の本。
その中に、こんな一文が。
『暮らしの中で大事なのは、誰もが興味を
ひかれるような珍しいことではなく、
日々繰り返される当たり前のことだと思います。
そうした平凡な営みを支える労力こそ、
評価されるべきだと考えます。』
あたりまえ過ぎて軽視されがちな日々の営みが、体の状態を大きく左右することは、実感しています。
そしてそれを支えるのが、介護なんですよね。
私も「そんなあたりまえのこと…」と迷惑そうにされても(笑)
しつこくしつこく‘あたりまえ’のことを外来で言い続けようと思います。