素直さって強力な武器…と
あらためて思ったエピソードを。
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20歳代の男性。
中学生の頃にいじめを受けていた。
成人して専門学校を出た後に、
一人暮らしをして就職するも、
人間関係のトラブルから
精神的につらくなり。
他人の視線がこわい。
世の中全体がこわい。
怒られると萎縮して話せない。
自分に自信がない。
迷惑をかけるなら、
いない方がいい。
手続きで訪れた市役所の方が、
当院につないで下さり、
お母さんと来院したのが2年前。
初回は視線も合わないし、
採血も
「気持ちの覚悟ができていないので…」
とせずに帰宅。
翌月、覚悟を決めての採血で、
BUN 8台(理想は15-20)と
著しい低たんぱくを認めました。
アイスや炭酸水などの糖質を、
間食で結構とっていたので、
メガビタミンの資料をお渡しして
食事指導。
ひとまず不安軽減のためにと
デパスという安定剤も一応処方するも、
あまり改善なし。
フェルガード100Mをお勧めしたら、
1か月後にお母さんが
「感情面で落ち着いてきた。」と。
本人ははにかむような笑顔で
「自分では、よくわからない」と
言いますが。
毎月少しずつ少しずつ…改善。
休日に外に行く気になった。
当院の予約を、いつのまにか自分でしていた。
母の職場に一緒に行くようになった。
仕事場に、自転車で一人で行くように。
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そんな彼が今日来院。
あれ、しばらくぶり…と思ったら、
なんと10か月来ていなかった。
デパスも当然処方なし。
診察室に入ってみて、
びっくりしました。
顔つきがしっかりして、
体格もしまっている。
「連休明けに、教習所に
免許をとりにいきます。」
職場でも、周囲の人と
コミュニケーションがとれて、
精神的に安定しているそう。
家のことも率先してやってくれるとか。
「先生にアドバイスされた通り、
ご飯を少なく、肉や魚を沢山
食べるようにしているんです。」
とお母さん。
2年前のアドバイスを、
きちんと受け止めて、
実行してくれたんだ…と
こちらが感動。
「家族以外の大人が、親身に話を
聴いてくれたということも、
大きな支えになりました」
と言われて、
「うちは〇〇科じゃないから」
と言い訳してすぐに丸投げせず
ひとまず向き合ってみよう。
あらためてそう思いました。
心から、ありがとう。
いい週末をお過ごしくださいね。