こんにちは。
最近、当院のもの忘れ外来に通い始めた70歳代の女性。
当院は認知症治療だけお願い、内科は近医で…というのはよくあることなのですが。
メトホルミン, シュアポスト, カナグル, ピオグリタゾン, ネシーナ, キネダック…と糖尿病だけで6種類の薬が処方。それでもHbA1c 8.6%と血糖コントロールは良好とは言えず。加えてタケキャブ, リピトールなどの認知機能を悪化させる処方薬も入っています。
食生活を確認すると、アイスクリームやゼリーなどの甘いものを毎日食べていると。
血液検査を見ると、体に備蓄として蓄える貯蔵鉄をあらわずフェリチンが7.2ng/ml。フェリチンは、女性では理想は100以上で、30以下は重度の鉄欠乏。
私たちが食事をして元気に活動をできるのは、体の中でATP回路という回路がまわってATPというエネルギーが生み出された結果。
鉄は、このATP回路の中でもかなめと言ってよいほど重要な役割を果たすため、鉄が不足するとエネルギー不足で元気が出なくなります。そのため、食べても食べても必要なエネルギーが生まれず「もっと食べたい!」と満ち足りないために甘いものを我慢できなくなってしまうのです。甘いものを食べたいのは、体のエネルギー不足のSOSサインなんですね。
鉄欠乏の解消は、鉄剤を内服しても一朝一夕とはいかず数か月単位での時間を要しますが、食欲コントロールという根本的な部分に近いアプローチなので、ぜひやっておきたいところ。
糖尿病の処方が多すぎること、認知機能低下のリスクがある処方薬をどうするかは、当院の処方薬ではないのでなかなか介入が難しい。正直、うーーーーん…と頭を悩まされるところです。
認知機能はもの忘れ外来、糖や胃は内科で…と、単純に分担すれば解決というものではないんですね。
人間の体はすべてつながっています。