こんにちは。
自分で実際に体験しないと、わからないことがたくさんあるな…と感じました。
『コグニトラックス』という検査を、私自身がやってみました。
コグニトラックスというのは、パソコンで行う認知機能のテストです。
当院のもの忘れ外来でいつも行っているのは、いわゆる‘長谷川式’。(改定長谷川式認知症スケール)
この長谷川式は日本人の長谷川先生が考案されたとてもよい検査ですが、初期の方向けではありません。
MCI(軽度認知障害)=グレーゾーンの方や、元々高学歴の方では高得点をとれてしまい、見落とされてしまうことがあります。
一方のコグニトラックスは、初期の方の変化を敏感にとらえられるのが強みです。
内容はと言うと、単語や図形を一度覚えて、後から同じものが表示されたらキーボードを押したり。
文字の色と意味が一致している時にキーボードを押したり。
よく使うボタンが大きい、専用のキーボードもあります。(斎藤先生から譲って頂きました♪)
この検査は、かなり時間がかかります!
フルバージョンを選ぶと、40-50分くらい。
得意なところは、クイズ感覚で楽しくできましたが、図形を覚える部分は苦手で…少し苦痛を感じました。
検査の後半ともなると、注意力が落ちていく。
「2つ前の図形と同じ色と形の図形が現れたらクリック」
そんなもん、覚えていられるかーーーー!!!
うまく答えられないもどかしさや焦りが…次第にいらだちに変わっていくのがわかり、正直途中でやめたくなりました。
私がぶっちぎりで低い点数だったのは「社会的認知」というカテゴリ。
外国人の顔写真の下に「穏やか」「幸せ」「怒り」「悲しみ」などの言葉が表示され、上の表情と言葉が一致しているかを回答するテスト。
でも私、静かに微笑んでいる女性を見て、実は奥底に悲しみをこらえている微笑んでいるのでは…とか。
この白人男性、目は笑っているけれど、こういう時こそすごく怒っている人もいるよね、など。
隠れたストーリーを勝手に深読みしまくり…
私の社会的認知能力は、同年代のなんと下位10%でした!
(中2の長男にサイコパス認定されました笑)
それはさておき、検査中の自分の中に静かにわきあがった怒りの感情。
これはいったいなんだろう?
「たとえ点数が低くかろうと、私の生活ちっとも困ってないのよ!」
という怒りなのかなと、想像しました。
変な図形を覚えさせられて、答えられないからと低い点数(=ラベル)を貼られる。
自分という人間に‘ダメ出し’されているようで心理的な抵抗を感じたのかもしれません。
今回私は、誰に頼まれることもなく自主的に行いましたが、それでもうんざりしました。
しぶしぶ家族に連れてこられた方なら、なおのこと不快に感じるでしょう。
心のどこかに不安を感じている方ならなおさら傷ついてしまうリスクがある。
日ごろ長谷川式を使う医療介護関係者は、一度はコグニトラックスを経験されてもいいかもしれません。
長谷川式は、現時点での私たちにはまだ易しすぎて、患者さんが受けるストレスをイメージしにくいので。
うまくできなくてイライラする。できない自分に不安に感じる。
それを生の感情として体験した方が、明日からもう少しご本人の気持ちに寄り添える気がします。
傷つけてしまう申し訳なさ。
それを補って余りあるほどのメリットを、私たちは診療の場で提供できているのか。
それを自問するとことからスタートします。